野々池貯水池周辺をウォーキングしながら気がついた事や思い出した事柄をメモします。

デマが勝つ時代?

東大の池内准教授(中東専門家)が、「代議制民主主義 - 「民意」と「政治家」を問い直す (中公新書)」の書評で、英国のEU離脱を簡単に説明している。分かりやすいので、引用してみた。
 「英国のEU離脱国民投票可決で大騒ぎしていますが、これは本質的にEUの仕組みの問題というよりも、民主主義の仕組みの問題です。離脱票を投じる人が「EUのせいでこうなった」と思っていることの多くが実際はEUのせいじゃないんです」
 「筋金入りの英国独立万歳と言っている人以外の、中間で揺れている人たちの多くは、自国のエスタブリッシュメントブリュッセルの官僚に対して「No」という意志は示したいけれども、本当に英国がEUから出てしまうと困る、だから離脱賛成票49.99%で思いっきり焦らせて、EU本部に対しても 更に譲歩させられればいいな、と」
 「移民・難民問題だって、英国の場合は、いくら過去10年ほど東欧から労働者が大挙してきているのが目立つとは言っても、文化的な摩擦は起こしていない。それよりもはるかに数が多く、一部で摩擦があるのは、南アジアや中東やアフリカなど旧植民地・英連邦諸国からの移民で、これはEUのせいではない」
 「英国の移民問題は英国が世界中で植民地主義支配をしたツケが回って生じているのであって、EUの政策が寛容だからではない。 ツケと言ったって、利益のほうがはるかに大きい。 旧植民地諸国に行けば英国の法律や学位がそのまま通用して、 旧植民地の諸国が苦労してお金をかけて学校で育てたお医者さんとかを英国に頭脳流出させてこき使い、逆に英国人は外国語を喋れなくても英連邦諸国を中心に世界中に出稼ぎに行ける有利な立場にいる。それがEUとも互換性があると更に有利、といううまい話だったはずだが、藪蛇の離脱投票で、EUから勝ち取ってきた好条件は取り上げられてしまいそうだ」
 「しかしEUがなかったら、英国の庶民の暮らしはもっとずっと酷かっただろう。だってかつての大英帝国を支えた産業革命時代以来、ろくに新しい産業が育っていない地方が多いのに、それで もなぜかまあまあの生活をできている。それはなぜかというと英国に都合のいいシステムを作って、途上国からも大陸ヨーロッパからも吸い上げてきたからでしょう。もちろん、それで潤うのはもっぱら上層だと言っても、上の方の産業があるから、庶民もつましくても極貧にはならずに過ごせてきた」

現在の世界がそのままこれでいいとは思わない人が多いという意志表出はできたが、これによって、現状のつましい生活を可能にしている制度すらぶち壊してしまい、低所得で教育水準が低い層が離脱に投票し、しかもその人達が今後離脱によるデメリットを一番に受ける可能性が高い結果となる、直接投票による民主主義の危うさを如実に示した事件が、今回の英国の国民投票だったと言う解説。その後、EU離脱の国民投票から一日も経たないのに、勝利した離脱派の主要人物が訴えてきた公約の「うそ」を認め、国民から強い批判が出ているともあった。また、離脱派リーダー今になって、投票前の公約や発言を、そんなことは言っていないとのことらしい。すると、当然のことながら、「離脱への投票を後悔している」という書き込みがあふれ、英政府に2度目の国民投票を求める署名は350人を突破したそうだ。いやはやデマとは恐ろしい。

また、「デマ」時代の民主主義」には、こんな話もある。
「イギリスだけでなく、アメリカでの「トランプ現象」にもみられる。メキシコとの国境に壁を築き、メキシコに支払わせる、日本や韓国の核武装を容認するといった、およそ現実的に実現可能性が低い主張を公の場で、何の確証もないまま選挙キャンペーンに用い、その結果、共和党の予備選を勝ち抜け、大統領候補としての指名を確実にする「誇張された主張」、もう少し厳しく言えば「デマ」が公的な言説空間に持ち込まれ、それが政治的な決定を大きく左右するような影響力を持つ」「公的な場で「デマ」を繰り広げることへの自己抑制を失った政治家が、自らの権力を得る手段として「デマ」を意図的に活用するのが当たり前になった」「現代は民主主義、とりわけ国民投票アメリカ大統領選のような直接民主主義に近い仕組みにおいて、「デマ」が勝つ時代であり、その「デマ」を意図的に利用する政治家が存在する限り、政治が混乱する、という時代なのだ」

民主主義とは多数決だから、相手よりより刺激的な発言でデマを飛ばせば、選挙民を味方につけることができるという事だろう。
でもこんな話は日常的にある。例えば、何かの会議等で自分が不利な状況に追い込まれたと察しられたとき、不利に追い込まれる前に話題を故意にそらす、あるいは、間者を使ってデマを流したりするので、いつの間にか最終決定者も嘘を信用してしまうのは映画や漫画でよくある話。ほとんどの関係者はそれが嘘やデマだと本当は知っていても、そんな話は面白いので、自分に関係なければだんまりを決め、そしてひそひそ話が空気を醸成してしまう。
 「NO SECRETS: THERE’S TALK IN THE PITS」