12月8日のBSフジ・プライムニュースで「何が問題エアバック」が特集されていた。この日の後半、今や全米及び日本の自動車業界最大の関心事となっている、タカタ(株)のエアバック異常爆発という市場不具合が取り上げられた。タカタ(株)の関係者は同席せず、日本のモータージャーナリストとPL訴訟に精通する弁護士が出席し、タカタ製エアバック不具合の現状を解説していた。番組で報道されたタカタのエアバック不具合を聞く範囲では、タカタは特に全米で厳しい訴訟の嵐の中に今後突き落とされる予感がする。既に動き出している集団訴訟やその後の裁判での懲罰賠償も十分考えられ、企業の存続さえも危惧される事態が発生する可能性すらある。つまりタカタのエアバッグは危機的状況の真ん中にさしかかっている。この事は膨大なリコール対応費用に加え米国弁護士の格好の獲物になってくる。

「インフレーター内に収納された火薬(硝酸アンモニア)が設計値以上に爆発して格納を破損、結果、人身事故に至る。」
一方、業を煮やしいたたまれなくなったホンダは10日、エアバック問題で国内初の調査リコールを発表した。
それによると、タカタ製の欠陥エアバッグ問題を巡り、原因究明を待たずに実施する調査リコール(無償修理・回収)を日本で行う。調査リコールが実施されれば国内では初めてとなり、しかも、調査リコールを全世界に広げる意向を明らかにしたとあった。本来、自動車の安全や保安基準を保持できない場合、まずは不具合の原因究明が最優先され、その後一斉に対策部品が確保され次第リコールするのが一般的。だが、今回の調査リコールは日本の法令にも明記されていない自主的リコールのようで、自動車企業はここまでしないと顧客の信頼が得られない緊急事態だと考えたのだろう。「原因は特定できていないが、安全のためリコールに踏み切った」とは、異例中の異例で、自動車メーカは飛んでくる火の粉の火消しに躍起になっているのが目に見える。
しかし、不具合発生元のタカタは「自動車メーカーのリコールに協力する」と自らの立場を堅持し、全米への拡大にも消極的で、自動車メーカの判断に従うとしている。確かに、自動車の市場不具合は最終組立メーカーが市場対応するのが一般的ではあるが、米国で10数年前に発生したフォードエクスプローラ車のタイヤ不具合を契機に、不具合を発生させた部品メーカーも市場対応することが義務付けられた、所謂「TREAD法(トレッド法)」が施行されている。だから、今回のエアバック問題も、法令上では主原因部門であるタカタ(株)が率先して対応すべき事項である。 それにも関わらず、聞こえてくるタカタの市場対応は鈍い。その誠意の無さ(そのように見える)が前記したように企業として米国の厳しいイバラの道に進ませている。
国内ではホンダが先陣して調査リコール処置をとったが、ほかの自動車メーカーも追随すれば、リコールの対象台数がさらに拡大する。
さすれば、生産能力に限りがあるタカタとしては、交換部品をどのような優先順位で供給するのかという難しい課題に直面する等、難題も多い。だとしても、全数回収調査によって事態が収束するわけでもないはずだが、最重要項目である不具合原因究明状況の声が一向に聞こえてこない。日本の景気を牽引する自動車産業にあって、エアバック問題が景気の足を引っ張らねばよいが・・・。
参考:
タカタエアバック問題に関連し、リコール制度が新聞紙上やネットにも頻繁に出てくるので、ネット上で少し調べてみた。
先進国は自動車等に関する独自のリコール制度を定めているが、このなかで自動車業界にとって最も影響力のある日本と米国の制度についてネット情報の受売りを少しばかり参考までに。
①リコールに関する法令
重要法令として、日本では「道路運送車両法」(国交省)、米国では「全国交通・自動車安全法」(NHTSA)と「消費者製品安全法」(CPSC)があり、ともにリコールを命じる強力な権限を規制当局に与えている。今回のエアバック問題の担当はNHTSA。
②自動車における日本―欧米法令のリコール適用の相違
日本では「道路運送車両法」に基本がおかれ、法規不適合をリコールと規定しているのに対し、欧米では「実安全欠陥が傾向的に
存在するか否か」が判断基準であり、
実際に事故が発生し且つ傾向性が有る場合がリコールとなる。従って、同一事象にも係らず国内外で市場処置の仕方が異なる。
法規適合でも実安全欠陥が存在する場合は、国内でもリコール処置を適用する場合がある。
また、米国のトレッド法では実質同一車の米国以外でのリコール案件は届出が必要で、改修は世界規模になることが多い。
次に、リコール処置と大いに関連するPL法について。
米国では、企業が製品に重大な危険があると判断した場合には、速やかに関係官庁に報告する義務がある。
例えば、CPSCは24Hr以内の報告義務と違反した場合の制裁金は最高165万ドル、NHTSAは5日以内の報告義務と違反した場合の制裁金は最
高1500万ドルを科す懲罰的賠償制度がある。 また、製品欠陥が原因で傷害事故が発生した場合に適用される米国のPL法では、企業の
悪意のある行為に対して陪審員による懲罰的賠償制度が適用されるリスクがあり、リコールの判断を誤ると官庁及びPL訴訟の両面に
おいては損害賠償を科せられることになり、リコールは迅速且つ公正に実施する必要がある。