最近、FBに流れてくる世界の、特に米国のオフロード事情を眺めていると、カワサキの2ストロークモトクロスマシンを期待する声は相変わらず多い。今年1月に2ストロークエンジンらしきディザーを発出したKawasaki USAのFBを見ても、「カワサキ、2ストロークはどうなった」という声は変わらずコメント欄に投稿され続けている。
確か、7年ほど前、日本で唯一2スト125㏄、250㏄のモトクロスバイクを市場に供給しているヤマハが発表した新YZ80の紹介記事「ヤマハ2スト2019年新型YZ85」の中に「今、2ストが売れている」という項があった。ここには『オンロードモデルではレーサーでも2ストロークは存在していないと言っていい状況だが、オフロードモデルでは今でも現役。さらにこの3年ほどは世界的に販売台数が伸びる傾向にあるとYZシリーズのプロジェクトリーダー・櫻井大輔氏は語った。メカニズムがシンプルで価格が抑えられること、同じ理由でメンテナンスのコストと手間が抑えられること、同じ理由で車重が抑えられることなど特に入門者にとってメリットが多い。だが、それだけでなく「面白さが理由でしょう」とも櫻井氏。2ストロークエンジンの痛快さを味わうチャンスがなくなっていく中、この分野では新車で味わうことができることから一線を退いたライダーの需要も見受けられるという。そのような背景からヤマハは2019年に新たにYZ65を投入し、さらにYZ85をアップデート。他にもYZ125/X、YZ250/Xと幅広いニーズに応えられるように2ストロークモデルを多数ラインナップしている』と解説し、ヤマハのモトクロスマシンの最近の販売推移が記載されているが、2016年以降、ヤマハのモトクロスマシン供給量の半分以上を2ストロークマシンが占める傾向にある」という記事があったが、その傾向は今なお継続中のようだ。
その後、今年2025年の2月7日のMotocross Actionネット誌に面白い記事「 WHY KTM DESERVES YOUR GRATITUDE FOR TWO-STROKES?」があった。KTMが多くの日本企業が止めた2ストロークのモトクロスマシンをなぜ開発したのかの理由を書いていたが、面白い論調なので再投稿してみたい。
「Motocross Action」「KTM’s Stefan Pierer explained in an Alan Cathhart interview, why KTM kept making two-strokes when everyone else was quitting. “When I started at KTM 30 years ago— back in 1992, I had to make the decision of whether or not to produce a new 125cc two-stroke engine platform. But, at that time, we didn’t really have the liquidity to support it, so we were thinking very seriously, should we do it or not? So many comments were made that the two-stroke is dead, but finally I said, ‘That’s the only new engine platform that we can afford to do, because a two-stroke motor is much cheaper to develop than a four-stroke, so let’s do it.’ And 30 years later it’s still alive in a quantity which I should not name, but if you twist my arm we’re talking about 50,000 bikes a year! Honda tried to stop everyone from making two-strokes, but Yamaha kept making them, too.」
KTMのStefan Pierer(KTMの前CEO)がAlan Cathhart(著名な二輪ジャーナリスト)のインタビューを受けた際、多くの企業が2ストロークマシンの開発・製造を止めていく中で、KTMがなぜ2ストロークエンジンを開発し続けた理由を語っている。
「私がKTMに入社した30年前の1992年、私は新しい125ccの2ストロークエンジン・プラットフォームを製造するかどうかの決断を迫られていた。しかし、当時はそれをサポートする流動性がなかったため、やるべきかどうすべきかを真剣に考えていた。2ストロークはもうダメだという意見が多かったが、最終的に私は、『2ストロークエンジンは4ストロークよりも開発費がはるかに安いので、それをやろう』と言った。 そして30年経った今でも、名前は伏せておくが、年間5万台のバイクが生産されている!ホンダはみんなに2ストロークの開発を止めようよと提案してきたが、しかしヤマハは2ストロークエンジンを開発し続けている」
「I remember in back in 2000 the Japanese told me in Tokyo, “We stopped with the two-stroke, everything is heading towards four-stroke.” Okay, but because of that racing got much more expensive, with really high-end technology, because a four-stroke top end is almost rocket science with 15,000 rpm, titanium valves and all those kinds of expensive things. KTM makes two-strokes because the customer wants them. We hope that with direct fuel injection we might even achieve street-legal homologation.」
「2000年頃、東京である日本人が私に言ったことを覚えている。"我々は2ストロークを止めた。皆は4ストロークエンジン開発の方向を向いているよ" と言った。でもしかし結果は、4ストローク化でレース自体が非常に高くなってしまった。4ストロークエンジンのトップエンドは、15,000rpm、チタンバルブ、その他もろもろの高価な部品を多用したもので、ほとんどがロケットの科学と同じように高価な技術で構成されており、従って4ストロークは非常に高くなっている。KTMが2ストロークを作るのは、顧客がそれを望んでいるからだ。ダイレクト・フューエル・インジェクションを使えば、ストリート・リーガル・ホモロゲーションだって達成できるかもしれない」
この話題は、同じくMotocross Actionネット誌が 2,3年ほど前に取り上げていた”2ストロークモトクロスマシン待望論”と重複するもので、オフ車大国米国では、コロナパンデミックの暗黒時代が到来後、2ストロークマシンの部品、プラスチック、ピストン、エキゾートパイプが飛ぶように売れ、そしてオフロードブームが再到来した時期、2ストロークマシンが急増した。この事実をスズキ、カワサキ、ホンダの首脳陣は無視し続けたが一方、 KTM, Yamaha, Husqvarna, GasGas, Beta, Sherco, TMはその事実を真剣に受け止めた。彼らは、2ストロークマシンが復活してくると判断した。結果は「 In fact, KTM was selling more two-stroke dirt bikes than the Japanese brands were selling four-strokes」となって、実際、KTMの2ストロークバイクの販売台数は日本ブランドの4ストロークバイクの販売台数よりも多いのだと言う話と重複する。4ストロークの$12,400 CRF450WEも$1500の2ストロークの中古バイクもモトクロスマシンとしての楽しさ・面白さは何も変わらないのだ。高価な4ストロークの$12,400 CRF450WEが格段に面白さを提供してくれるものではない、とも書いていた。 KTMは末端ユーザーの視点をよく理解してきたので、ハイエンドの技術を駆使したパワフルな4ストロークと軽量で安価に楽しめる2ストロークは必ず両立すると考えてきたのだと思う。だからこそKTMはオフ車市場の頂点に昇りつめた、と思っている。
別件だが、米国カワサキの先駆者のひとり、カワサキの大先輩種子島さんのブログ「明石暮らし」の8月23日の稿に、米国市場に販路を求めカリフォルニアの販売店訪問を続けていた種子島さんが、アメリカで二輪を販売するにはどんなバイクが良いのかとある販売店に聞いたところ、「『カワサキバイクは全部乗り、バラしてみた。バイクとしては立派だが、ただ、もっと売りたいのなら、ホンダのようにメーカーが出て来てサービス面を固め、毎年アメリカ向けの新モデルを持って来る事だね』と結んだ。『アメリカ向け?』と尋ねると、『私はバイクにはくわしくないが、ここでは、自動車も、自分たちで改造して、山や砂漠を走っている。バイクにはないようだ。二輪でオフロード走行に向けた物を持って来れば大当たりするだろう。それから、もっと速いバイク』」と書いてあった。その10数年後、私・ブログ管理人もアメリカのオフ市場の現場を毎年見て回った時も、四輪VWの改造車を子供や大人が乗って遊んでいる光景を何度も見たが、たぶん今もそうだと類推する。アメリカ市場の市場環境は少しづつ変わりつつあるかもしれないが、あの広大な山やデザートが存在している限り、開拓時代から連綿として続いてきた市場マインドは今も昔も基本は変わることはない。トランプ関税で多少の落ち込みがあるやかもしれないが、早晩復活する。
こうして、市場環境やKTMの成長過程や現在の法的再建の事例推移を見ると、二輪事業は経営手腕によってはまだまだ「未来ある事業体」と言えるのではないだろうか。当たり前のことだが、最後は結局、経営戦略の優劣が勝敗を決する。
・・" Let The Good Times Roll"・・